フォト・トラベル
大雁塔とともに残る唐代の遺跡、小雁塔
東洋一とも世界一ともいわれる石仏像を安置した石窟庵は、慶州観光のハイライト。仏国寺からさらに9km山中に入る石窟庵は、八世紀、時の宰相・金大城による仏国寺の改修の際、石仏寺の付属施設として造られた人工石窟であった。その後、この石窟は、李氏朝鮮における仏教弾圧により、人々から忘れ去られ、瓦礫のなかに埋もれてしまった。
石窟が再び日の目を見たのは1900年頃、郵便配達夫が、山中で雨宿りをしようとしたところ偶然に発見してからである。
その後、石窟はいくたびも改修が加えられたが、今は保護のため観光客の窟内への出入りは禁じられ、前面にガラス張りの小殿舎ができ、往時の趣は失われた。
石窟を拝観するなら、東の海から朝日が昇リ、ご本尊の額にある白毫(びゃくごう)がキラキラと輝く早朝に登るのがポイントだ。早朝四時から、仏国寺前より石窟庵行きの直通バスが出ている。
石窟庵は吐含山(とがんさん)の斜面を円形にくりぬき、前室、羨道(せんどう)、主室の三室からなっている。
前室には八部衆像が左右に四対ずつ立ち、羨道には入口に一対の仁王像が立つ。左右の壁面には四天王像が彫り込まれている。主室は高さ約7mの石造りのドームになっていて、本尊仏は高さ3.4mの純白の花圈岩を丸彫りした釈迦如米像である。その降魔印(ごまいん)と成道(じょうどう)なされた釈迦如来の表情を、これほどまでに崇高に表現した仏像は、世界でもまれで、見ているとため息が出るほど美しい。
また、本尊の額には、昔は金剛石(ダイヤモンド)がはめ込まれていて、朝日が昇りその光が石に当たると、石窟内は金色に光り輝いたといわれている。
本尊を囲む壁は、梵天(ぼんてん)、帝釈天(たいしゃくてん)、普賢菩薩(ふげんぼさつ)、文字菩薩(もんじゅぽさつ)などのレリーフ(浮彫り)で飾られている。なかでも、本尊の後ろに彫られた十一面観音像は優美さが際立っている。
仏像一つ一つの美しさと、それら全てが醸し出すドームとのバランスの素晴らしさ。
石窟庵は、そんな空間芸術の最高峰と言っていいだろう。
茉莉花VOL09/1992秋号より
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