フォト・トラベル
首都ヤンゴンの中心部にそびえたつ黄金色の仏塔「スーレー・パゴダ」/写真提供:中国新聞社
広島アジア競技大会に向けた取材企画「アジア・ピースロード(中国新聞社、中国放送主催)の取材陣はタイから空路、ミャンマーを訪れた。
熱心な仏教国で、無数のパゴダ(仏塔)が立ち並ぶ。北部は第二次世界大戦末期、インド侵攻を目指す日本軍の「インパール作戦」の戦場となった。この国で約18万人とも言われる日本軍戦没者をまつったパゴダもあった。
「私は日本には帰りません。…僧になったのですから。…私がしていることは、この国のいたるところに散らばっている日本人の白骨を始末することです。…幾十万の若い同胞が引き出されて兵隊になって、負けて、逃げて、死んで、その死骸がまだそのままに遺棄されています。」
第二次大戦末期のビルマ(現ミャンマー)を舞台にした竹山道雄の小説『ビルマの竪琴』のなかで、軍人から僧侶になって戦没者の遺骨を供養する主人公(水島上等兵)が、終戦で日本に帰る元の上司や戦友にあてた手紙の一節である。
塔わきの茶店の老女が手招きしてお茶をサービスしてくれた。「こんにちは」という言葉はなく、互いに合掌であいさつ。この国でも、仏教精神は暮らしに根付いていた。
30年前に成立した軍事独裁政府は、国土の半分近くを支配する反政府ゲリラとの戦闘に追われ、不安定な国情が続く。
軍政府は一昨年の総選挙でスー・チー女史(47才)が率いる民主化勢力に大敗したが、今も政権委譲を拒否。街には軍服姿があふれ、日本の「戦後」感覚とは程遠い緊迫感をうかがわせた。
近代化に乗り遅れた「アジアの最貧国」の一つでもある。が、庶民は一様に朗らか。戦闘のない暮らしを心から待ち望んでいる気持ちが、ひしひしと伝わった。
中国新聞社報道部・小野浩二
写真部・野地俊治
茉莉花VOL10/1993新年号より
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