フォト・トラベル
バーミアン石窟大石仏、高さは55メートルある。周りには無数の石窟が黒い穴をあけている。
バーミアン。アフガン戦争で国土が蹂躙(じゅうりん)されたアフガニスタンの東南、パキスタンからの出入口カイバル峠を越え、首都カブールからさらに北西へ50キロの地点にある仏教遺跡です。
多くの民族が往き来し、数多(あまた)の文化が運ばれてきたアフガニスタンは、現在、アフガン戦争後の復興が進んでいます。首都カブールでは、ロンギー姿の男、チャドルの女、遊牧民と羊の群れ、ラクダとロバ、バザールとチャイハナ(茶店)などの混沌とした様子を見ることができ、素朴で力強い人間の生活が、厳しいけれど美しい自然の中に、今も厳然と存在していることを教えてくれます。
ヒンズークシュ山中のバーミアン渓谷は4~5世紀に開かれ、仏教の一大中心地として栄えました。1300年前、唐の都長安からはるばるこの地に入った玄奘(げんじょう)三蔵法師は、「伽藍(がらん)は数十カ所、憎徒は数千人」とその隆盛ぶりを『大唐西域記』に記しています。
古代以米、灼熱の砂漠を渡り、ヒンズークシュの荒れた岩山を越えてきた人々は、バーミアンの緑の谷に旅の疲れをいやし、壮大な窟院と大石仏に心をうたれたに違いありません。
残されている石仏の顔は、侵入してきたイスラム教徒によって無残にも削ぎ落とされてしまっていますが、仏龕(ぶつがん)の上部には、菩薩像などの壁画が、痛みは激しいものの、千数百年の風雪に耐えて残っています。
アフガン戦争の終結したいま、バーミアンのオアシスは、幾多の歴史を飲み込んで、美しく平和なたたずまいを見せています。
茉莉花VOL07 1992春号より
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