フォト・トラベル
(上)釣鐘型のストゥーバが並ぶ「無形の界」。円壇のテラスからの展望がすばらしい。
(中)緻密なレリーフがいたるところに施されている「有形の界」。
1世紀前半、すでにインドとの交流が始まってぃたジャワでは、8世紀になると、その交流はますます活発になり、インドシナ半島から仏教が伝えられました。仏教は他の国々同様、土着の宗教と結びつき、人々の心に浸透、ジャワ島に限らず各地に拡がりをみせ、シャイレンドラ王朝時代に隆盛を極めました。この時代、8世紀後半から9世紀前半にかけて建立されたのが、世界的に名高い仏塔「ボロブドゥール」です。
インドネシア・ジャワ島の、メノレ連峰の麓、緑の木々に覆われたなかにその荘厳な姿をみせているボロブドゥールの仏塔にぱ、ベールに包まれた謎が数多く残されています。誰が、何の目的で造ったのか、さまざまな推測はあるものの、1千年経ったいまも、事実は依然として神秘の闇に閉ざされたままです。にもかかわらず、この仏塔は、「旺盛な官能を湛えた、息づく躍動感」を、悠遠の時間を超えたいまも、脈々と伝えているようです。私たちの「神秘」への畏敬の念が、きっとそう感じさせているのでしょう。
ボロブドゥールの仏塔が世界的に有名なのは、全体の企画構成のすばらしさと壁面に施されたレリーフにあるといえます。 煩悩に惑わされる現実を描いた「欲望の界」、回廊が釈迦の生涯を物語る「有形の界」、そして円壇のテラスに、釣鐘型のストゥーパが並ぶ「無形の界」。3つの世界が織り成す厳粛な雰囲気は、私たちを奥深い信仰の世界へといざないます。
茉莉花VOL.04 1991年 夏号より
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