フォト・トラベル
(上)第26窟にある涅槃像。その開掘は、7~8世紀とされる。
(中)アジャンタの石窟全景。1819年、狩猟に来たイギリス軍人によって発見された。
釈尊入滅後まもなく、釈尊の教えは弟子たちの手によってインド全域に伝えられました。敬虔な仏教徒たちは、釈尊に代わる崇拝の対象として、釈尊の仏舎利(遺骨)を納めた壮麗な仏塔を、仏教聖地だけでなく各地に競って建て、信仰の中心の場としたのです。
西インドでは岩山の断崖を掘り抜いて、礼拝所と憎院の組み合わせからなる…石窟寺院の大殿堂を造りあげました。
そのひとつがアジャンタの石窟(紀元前2世紀~紀元後8世紀)です。アジャンタの石窟は、インド西側の都市ボンベイから北東へ約250km。デカン高原の台地をえぐって蛇行するワゴーラ河の渓谷沿いにあります。29の仏教窟院が、高さ70mの岩窟に1500mにわたって並んでいる様子は、まさに壮観。一千年におよぶ仏教信仰の遺産が、悠久の時間を超えて、なお生き生きと私たちに迫ってくるようです。
ここには彫像、壁画など、いずれも仏教芸術上特筆すべき作品群が数多く残されていますが、とりわけ圧巻なのは涅槃像でしょう。螺髪、切れ長の目、厚い下唇、長い脚と豊かな体幅。これらはインド仏教芸術の典型的特徽であり、柔らかさ、美しさ、優稚さでは、他の追随を許さない作品といえます。
野趣に富んだ渓谷がつづく、きりたった大岩壁。そこにうずくまって、もくもくとノミをふるった信仰心厚い工匠たち。アジャンタの石窟は、彼らの不滅の偉業を伝えるとともに、当時の憎侶や民衆の信仰のエネルギーと創造力とを、力強く表しています。
茉莉花VOL.03 1991年 春号より
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