※茉莉花掲載時の肩書きのまま掲載しております。
北陸は久しぶりの大雪になりました。それでも、太陽が二、三日顔を出すと、あっという間にその雪も消えてしまいます。自然の力ってすごいですね。あなたのところ、この冬いかがでした? 雪は降らなかった?いいなあ。うらやましい…。
大雪の中でも、毎週お寺に通ってくるのは子どもたちです。ご存知ですか? 雪ん子劇団。そう、お芝居をしているんです。今、三つの公演が控えているので、みんな張り切っています。歌や踊りや手話の入った、楽しいミュージカルをやっています。その辺の普通の子どもたちですけど、舞台の上では元気はつらつ、みんな目が輝いています。
うるさいんですよ、練習の時は。小学校の一年生から六年生までが一緒にやってますから、うれしいんでしょうけど、私は「静かに!黙って!」を連発しなければなりません。これでは練習がはかどらないので、班長さんに任せることにしました。六年生が班長になって一年生から五年生まで六、七人が一つの班をつくっています。班長は親のようなものです。下級生の体調まで心配しなければなりません。おやつを分けるのも班長の仕事。等分にしたおやつを前にして「正座せぇ。合掌する時は手をたたいたらだめ。ほらやり直し。はい合掌。みほとけとみなさまのおかげによりこのごちそうをめぐまれました。深くご恩をよろこびありがたくいただきます」と、班長さんは偉そうな顔をして、お父さんみたいに言っています。これを見ている五年生が、次の年には班長に、またその下がその次の年の班長になってド級生に伝えていきます。
お寺に入ったら、まず仏様にごあいさつをする。自分のことよりちょっと人のことを考える。みんな主役。―こんなことをお寺でお芝居をしながら学んでいます。永六輔さんの著書『二度目の大往生』で、宗教とは「家の中で示す教え」とあリます。
たとえば、おばあちゃんが朝早く起きて、お仏壇の前で手をあわせている。子どもたちはその姿を見ています。これが家の中で示している教えなんです。小さい時からの環境というか、しつけって大切ですね。
みなさんの所は、おとりこし門徒報恩講ってあります?「さ、年に一度のほんこさん、今年もまいりましたよ」とお寺さんと一緒にお正信偈をつとめるの。今、私のところもその最中です。今日も、八軒のお宅でおまいりさせてもらって帰ってきたところ。あるお宅でお孫さんの話になりましてね。
「あいちゃん、どうしてるの?」
「大学に行ってます。このお正月も、帰ってきてすぐにお仏壇のおそうじするんですよ。小さい時からあの子にやらせてましたんでね。若はん(前副住職の呼称)にお数珠もらって喜んでましたよね。やっぱり仏さまは心のよりどころやもん」。
うれしいお話でしょ。年に一度の出会いの中で、心がぽっとあたたまります。あなたの家ではどうですか?
「前(さき)に生まれん者は後を導き、後に生まれん者は前を訪へ…」
ご先祖から守り伝えられてきた仏さまのみ教えを、後からくる人たちに伝えさせてもらいましょう。
あら、お日さまが照っていいお天気。もうすぐ春ですね。
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